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執筆者の写真川崎寛也

関西食文化研究会 肉と火入れの新時代

7月7日(日)京都調理師専門学校で開催された関西食文化研究会 第30回イベント「肉と火入れの新時代」のイベントレポートが公開されました。


11年目の今年度は「料理の温故知新」が通年テーマです。

最初に取り組むのは、「火入れ」です。


食材を肉に絞り、肉の新しい火入れの料理を披露していただき、肉と火入れの関係について考察と検証をおこないました。


イベントレポート 「肉と火入れの新時代」はこちら↓ http://www.food-culture.jp/event/regular/190707_onkochishin/


こちらのホームページでは紙面の都合上使われていなかった資料もありますので、ここで紹介しておきます。


ブリア・サヴァランはこう言っていますが、現代では、色々な手法で良い焼肉師になれるはずです。



日本料理では、魚の火入れの前に、塩や幽庵地につけることで、塩溶性たんぱく質が溶けます。それを加熱すると、ゲル状になった魚肉が水分を保持するので、たとえ炭火などの高温で加熱してもしっとりするのです。実際中心温度は75度にもなっていました。


日本で、このようにマリネしてから加熱するようになったのは、炭火という高温の加熱があったため、マリネしたほうが失敗が少ないためかもしれません。


フランス料理では、肉を焼く前にしっかり塩を浸透させると、シャルキュトリー(ハムやソーセージ)の処理になってくるので、いわゆるロティなどの場合は味付けが目的の場合が多いようです。


これはもともと昆布にメイラード反応を起こさせ、燻製をかければ、それだけで一番だしっぽいものが取れるのでは?と思って考えましたが、このときは、六本木一丁目のEdition Koji Shimomuraの下村シェフと、デンマークのシンポジウムで発表するために、その昆布を昆布締めに使ってみようとなって、やっていただきました。


白ワインを塗ることで、ブドウ糖を昆布に補強し、加熱するとメイラード反応が促進され、香ばしい香りが付くのです。それを燻製したもので豚肉を昆布締めしました。


昆布じめした肉は、脱水すると同時に昆布の香りとグルタミン酸が肉に移り、さらに筋線維同士が近接するようになります。それをソテーすると、さっくりした食感になります。


もちろん昆布のグルタミン酸によって、塩をしなくても十分に美味しいソテーになり、様々な国の方々は満足していました。



「炭の香り」をつける、とはよく言われることです。以前から「炭は匂いを吸収するほどなのに、なぜ炭の香り、という表現があるのか」という疑問がありました。


料理人によっては、落ちた脂が煙がついて、美味しくなる、という方もいました。


そこで、NHKの特番「和食の神髄をデータ化する」に出演したときに、検証していただくことにしたのです。


そうすると、肉から落ちる脂が熱い炭に落ちて煙になってはいましたが、しっかり仰いでいたため、煙は肉にあたっていませんでした。


更に、炭火の場合は一酸化炭素が発生するため、肉の表面の脂質も酸化しづらいようで、脂質酸化臭も少なかったのです。逆に、フライパンで焼いた場合は脂質酸化の香りがついていました。


高温の炭火による遠赤外線によって、表面の1mm程度が高温になり、メイラード反応がしっかり起こるため、香ばしい香りがついていました。


もちろん、お店によっては、あまり仰がないので、煙の香り(脂質酸化物)をつける場合もあります。脂質酸化物は悪い匂いだけではなく、肉や魚の美味しい匂いの構成成分もあるので、一概にどちらが良いとは言えません。


重要なことは、メカニズムを理解し、どのような仕上がりにするかをイメージしておいてデザインしてから、調理法を選択することだと思います。


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