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執筆者の写真川崎寛也

おいしさを分類する

科学的にモノを考える最初のステップは分類である。我が師匠の伏木亨先生は

、おいしさを4つに分類した。


https://www.amazon.co.jp/人間は脳で食べている-ちくま新書-伏木-亨/dp/4480062734/ref=pd_cp_14_1/357-4606030-3839352?_encoding=UTF8&pd_rd_i=4480062734&pd_rd_r=71ad7289-3050-11e9-aacd-e5aa37c7e48e&pd_rd_w=tAjK8&pd_rd_wg=gNIYx&pf_rd_p=960f7b64-96bc-43a7-8a7a-4c4bb301da91&pf_rd_r=Y11HH1HC2C4QWKTQJXZG&psc=1&refRID=Y11HH1HC2C4QWKTQJXZG


1. 生理学的なおいしさ

たとえ味のない水でも、喉が渇いているときは「おいしい」。スポーツドリンクも、通常時よりも運動後に飲んだほうが「おいしい」。逆に、どんなにおいしいものでも、お腹いっぱいだとおいしくない。これらは、人間の生理学的に欠乏している物質や栄養素を積極的に摂取するために、感じさせられる「おいしさ」である。


2. やみつきを誘発するおいしさ

チョコレート渇望という状態があるが、これはチョコレートが食べたくてしょうがない、という状態のことである。ラーメンが無性に食べたい、やみつきになる味のラーメンなどという表現もされる。また、食べ始めると癖になって止まらないスナック、というのもあるだろう。これらの食品は「やみつき」を誘発するおいしさを感じさせると言える。共通するのは、甘味、油脂の感覚、だしのうま味とエネルギーである。これらが組み合わさったり強調された食品を経験すると、強く記憶に残って、また食べたいと思ったり、もっと食べたいと感じて摂食行動が促進される。栄養学的には、三大栄養素である炭水化物の分解物である糖の甘味、脂質の感覚、タンパク質の分解物であるアミノ酸のうま味であるため、それらのやみつきになることは、生存のためにも重要な行動である。


3. 食文化のおいしさ

食文化のおいしさとは、集団に伝承されてきたおいしさ、家庭のおいしさであるとも言える。幼い頃から食べてきた食品の風味は、記憶に強く残り、成長後にも好んで食べるようになる。国や地方、地域に発達した料理は、その土地に育った植物や動物を加工したものであり、それによって生じた独特の風味を好むようになることは、その土地で生存していくためにも重要である。鰹だし風味の餌を離乳期のネズミに摂食させると、成長後にも鰹だしを好んだ、という研究結果もあり(私の学生時代の研究ですが)、特に離乳期前後の風味経験の影響は重要であることが分かってきている。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/36/2/36_116/_pdf


4. 情報のおいしさ

旬とは、特定の時期に食材がおいしくなるとされることであるが、それ以外の時期との違いが分からなくても、旬だ、と言われるとおいしい気がする。さらに、人間が持つ情報が地域に限定されていた時代と異なり、現代はテレビやインターネットなど情報源として様々なものがある。それらの情報源から得た、「この店のこれがおいしい」「権威あるグルメランキングで何位」などの情報は、おいしさを増幅させる。


脳は、食品を味わった瞬間、これらの4つの要素の組み合わせでおいしさの程度を判断しているのである。

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