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執筆者の写真川崎寛也

料理人の疑問 だしの濁りとアク



募集している料理人の疑問です。今回は「だしの濁りとアク」について、いくつかいただいたので、回答します。


質問

・出汁の濁る原因が昆布にあると私は思うのですが間違い無いでしょうか?

 鰹節など節だけで水から火にかけてグツグツとセオリーに全く反するひき方をしても濁りません。

・昆布出汁はなぜ濁るのでしょうか? 数年間寝かした昆布はぬめりが少ないです。フコイダンが分解されて減少した事が考えられます。


回答

鰹節と昆布のだしの濁りは、両方の影響があると思われます。そもそも濁りとは何でしょうか。濁りは、水に溶けない物質が、分散している状態といえます。水に溶けない物質とは、油脂が主要なもので、他には、不溶な多糖類が想定されます。


鰹節の場合、油脂はカビ付けによるカビで分解することと、たんぱく質やその分解物であるペプチドは濁りの原因となりますが、ガラス化した本枯鰹節の場合は、溶け出しにくく、濁りの原因とならない、またはアクとして浮いてくるので、取り除ける、ということが言えます。


昆布には大きな分子であるフコイダンやアルギン酸などの多糖類が多く含まれます。フコイダンは水溶性ですが、アルギン酸は不溶性なので水に溶けません。、ただし、カルシウムイオンが含まれる硬水だと、アルギン酸は不溶になり、濁りの原因とある可能性があります。熟成が進んだ昆布は、多糖類が分解され、小さくなっていることも考えられるので、濁りにくくなる可能性が考えられます。



質問

・ 一番出汁を引くときに炭酸水を使った方がよりスッキリとした出汁が引けます。何故でしょう? ぬめりも抑えられている様に感じます。


回答

ぬめりが抑えられているとしたら、多糖類が溶け出にくいという可能性が考えられます。ただし、炭酸水、つまり弱酸性の水溶液によって、溶け出しにくくなるかどうか、が問題ですが、アルギン酸は酸性になると不溶になり、フコイダンは溶けやすくなるようです。どちらの作用が強いか、について、詳細な実験が必要かと思われます。



質問

・調味料を入れると澄んできます。何故でしょう?

 一番出汁を引いて濾した直後、濾し布を通過する時に空気を含み乱反射しているだけでしょうか。それとも他の原因(タンパク質の凝固)などでしょうか?


回答

調味料によると考えられますが、塩はそんなに作用はないでしょうし、醤油は弱酸性とはいえ、調味料として使う程度の濃度ではそこまで作用はないでしょう。どのような調味料で、どの程度透過性が高まるか、についての実験が必要と思われます。



質問

・アクについて

 先生はミオグロビンが主としていましたが他の部分も含まれますか?筋線維の筋形質タンパク質は水溶性。細胞質のミトコンドリア,筋小胞体、ゴルジ装置、グリコーゲンなども含まれますか?ゆで卵を煮汁に浸けておいて、その汁を煮沸するとアクは出ます。白身にはミオグロビンは無いと思いますので回答願います。


回答

筋肉のたんぱく質は、筋線維たんぱく質(アクチン、ミオシン)・筋形質たんぱく質(ミオグロビン、酵素など)・結合組織たんぱく質(コラーゲン)に分けられます。アクの定義として、動物性のものについては、筋肉を煮た際に、鉄を含むミオグロビンという酸素を運ぶ色素たんぱく質が水面に浮いてくることで酸化し、灰色になることで、アクとして認識されることを指します。同時に、ミオグロビンなどのたんぱく質が水面に浮いてくるときに脂質を抱き込み、浮いたままになるので、酸化した脂質が液体に分散せず、取り除きやすくなります。


卵については、たんぱく質はオボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、リゾチームなどがあります。これらのたんぱく質は変性温度が異なり、オボアルブミンは84℃、オボトランスフェリンは61℃程度のようです。おそらく、ゆで卵を作った際に、完全に変性していなかったオボアルブミンなどのたんぱく質があり、それが煮汁に出て来たために煮沸する、つまり100℃までしっかり温度が上がったことで、熱変性し、浮いてきたのであろうと考えられます。


ちなみに、フランス料理で用いる卵白によるスープの清澄化についてはいくつか報告があるため、こちらに紹介しておきます。


卵白によるスープの清澄効果について(第2報)

-卵白とひき肉の併用効果-



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