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執筆者の写真川崎寛也

料理人の疑問 煮物とだし



募集している、料理人の疑問について、今回は、「煮物とだし」関連で回答します。


質問

・煮物で使う出汁の最適とは?

 私は日本料理は素材を活かす事だと思います。そういう意味では香りのしない出汁が究極では無いかと思います。一番出汁はその風味をも味わうので香り成分が飛ばない様に心掛けますが煮物はそうではありません。敢えて香りを飛ばす様に出汁を引きたい場合はどの様に引くのが良いのでしょうか?


回答

興味深い観点だと思いました。確かに、昔の専門料理か何かで、和食の方が、雑味が不要だから、にがりを含んだ塩ではなくて、専売公社の塩が良いんだ、とか、にがりを含んだ塩から、卵白でにがりを取り除く技術を紹介してたりしましたね。


香りについては、香りが不要であれば、味成分は揮発しませんし、変性もしませんから、出汁をひいた後、沸騰させて香りを飛ばすとある程度は揮発するでしょう。


飛びにくい香り成分であれば、アルコールを加えて沸騰させると、共沸という減少により、アルコールとともに揮発する可能性があります。



質問

・根菜などを下茹でした後に、水に入れてしっかり冷やした後、また煮汁にて味付けをするのは何故でしょうか?冷やす理由が知りたいです。


これは、一言でいうと、煮崩れを防ぐためです。


よく「煮物は冷やすことで味が入る」と言われますが、実は、「煮物は冷やす”ときにも”味が入る」というのが正しいのです。


調味料の味成分は、分子運動が激しい、つまり温度が高いほうが、素材に移動します。これは物理化学的な話で、温度が高いほど動きが激しい、ということです。しかし、加熱を続けると、野菜の細胞壁を繋いでいる接着材であるペクチンが溶け、組織が柔らかくなり過ぎるのです。


下茹でによってペクチンがある程度壊れ、細胞に味成分が入りやすくなれば、後は冷やした状態でも、味成分は細胞の中に「拡散」していきます。


野菜の加熱による柔らかさのコントロールと、味を入れる工程を分けて調理技法がデザインされている、日本料理における素晴らしい調理法だと思います。


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