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執筆者の写真川崎寛也

料理人の考えていること

更新日:2019年5月7日

料理人にとって技術と同様に重要なことは、デザインする能力だと考えられる。「何を作るか」ということを考える際に必要な要因を、社会科学の手法を使って研究した。


月刊専門料理で長く連載されている、柴田日本料理研鑽会の「京料理のこころみ」は、一流の日本料理人が、テーマ食材を用いて新しい料理を考え、それを互いに批評したりポイントを指摘したりする連載である。記事の中では、「新しい料理を考える際の考え方」や「なぜその料理が高い評価となるか」など、新しい料理を考えるうえで重要な項目が議論されている。そこで、「京料理のこころみ」を読み解くことによって、日本料理人の思考過程を分析し、重要なポイントを10個見出した。


⇒テーマ食材の触感が活かされているかどうか


⇒テーマ食材の風味が活かされているかどうか


⇒うま味を含むおいしさがテーマ食材からきちんと引き出されているかどうか


⇒その料理の中で主素材が主役としてはっきりしているかどうか


⇒テーマ食材と副素材との相性がよいかどうか


⇒味が濃すぎる、油脂が強すぎるといったしつこさがないかどうか


7.バランスがよい

⇒料理として全体のバランスがとれているかどうか


⇒外観や仕立てが日本料理・京料理らしいかどうか


⇒全体として品が良いかどうか


⇒驚きやインパクトを感じられるかどうか


この内容は、海外学術論文化した。

https://flavourjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/2044-7248-4-1


また、研鑽会の内容をまとめて再編集した書籍にも、コラムとして執筆した。

http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00621600


この10要因は、日本料理に限定されるものではないと考えたので、フランス料理人にも調査を行って、日本料理人とフランス料理人の思考過程の違いも見出した。フランス料理人に対しては、「日本料理・京料理らしさがある」を「フランス料理らしさ」に変えてアンケートを行った。


日本料理人においては、「主素材の風味が活かされている」と「主素材の旨みが活かされている」は、他の要因に影響を与える影響要因だった。それに対し、フランス料理人においては、この2つの要因は他の要因から影響を受ける結果要因に分類された。


日本料理人とフランス料理人の共通点は「驚き・インパクトがある」が他の要因から影響を受ける結果要因に位置づけられていることだった。これは、今回の調査に協力していただいた料理人全員がガストロノミーにおける非日常性を意識しているからかもしれない。


思考過程とは、「考え方のクセ」のようなものなので、修行過程でついた師匠や、自分で料理を考えるようになってからのパターンだと思われ、変化していく部分と変わらない部分があるだろう。


今後、この10個のポイントについて、さらに深掘りした内容をアップして行く予定です。

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