※データ解析に不備があったため、再解析しました(2020.10.27)
料理人の頭の中を見える化できれば、若い料理人の参考になると思い、月刊専門料理の連載ではデザインの観点で料理を考えたり、日本料理研鑽会での議論を研究対象にしたりしてきました。
今回は、月刊専門料理2020年11月号の特集が、「一問一答」ということで、フランス料理・イタリア料理・中国料理の12名のシェフの皆さんが様々な観点で、ご自分の料理について、答えておられるので、これは見える化してみたいと思い、記事を読み込んで、解析をしてみました。
「組み合わせ」
まずは、一番多かった「なぜこの食材やソースを組み合わせたか」や「なぜ相性がよいと思ったか」についての問いに対して、答えた回答で多く使われた言葉を示してみました。
このように、組み合わせについて答えているときは、「香り」や「味」、「食感」「風味」など五感に関する言葉を多く使われていることがわかりました。これは、食材やソースの組み合わせを考えるときには、自分の五感から発想していることがわかります。
さらに、料理人ごとの違いも見てみました。
これは、各料理人が、どのような言葉を使って回答していたかの傾向を示しています。赤字が料理人(ローマ字表記)で、青字が「組み合わせ」についての回答で使われた言葉です。例えば、桃の木(Momonoki)さんは、個性や素材の近くにあるので、それを何度か使って回答されていた、とか、Nabeno-Ism(Nabenoism)さんやCHIC peut-etre (Chic)さんとaki nagaoさんは、近くにあるので、似た言葉を使って回答されていた、ということが見える化されました。
※前回、間違った解析からの考察「Nabeno-Ismさんはフランス料理、ShinoiSさんは中国料理ですが、近くにあるのは興味深いですね。使っていた言葉が似ていたというだけですので、考え方が似ているとまでは言えませんが、共感できる部分が多くて仲良くなれるかもしれません。」と書いてしまいましたが、さすがに中国料理とフランス料理の方は考え方も大きく異なるのでしょう。今回の方が納得感ありますね。
文字が重なってしまって見にくくて申し訳ないですが、じっくり見てみると面白いですね。
皿・仕立て・盛り付け
次は、「なぜこの皿を使ったか」や「なぜこの仕立て?」「なぜこの盛り付け?」という問に対する回答の解析結果です。
先ほどと同様に、大きな文字が多く使われた言葉ですが、皿についての回答なので、『皿』が大きいのはおいておいて、やはり「料理」「肉」「ソース」などが多く、あとは五感に関することに加えて、「お客」や「一緒」「一口(方向が縦になっています)」「量」「手前」など、お客にどう食べさせるか、を強く意識しており、量や皿に置く位置などを意識していることがわかりました。
次に、料理人ごとの違いです。
皿や仕立て・盛り付けについても、料理人ごとの違いを見ると、「食べさせ方」に関する考え方が見えてくるかもしれません。使っている食材としてフォワグラやテリーヌを使うフランス料理の方は、それが現れていますし、興味深いのは、中国料理の桃の木(Momonoki)さんやShinoiS (Shinois)さんがフランス料理の方の近くにあり、皿や仕立て・盛り付けについては、ジャンルの違いというより、料理人の考え方が現れているのかもしれません。
以上のように、月刊専門料理さんが素晴らしいデータを集めていただいたので、せっかくなので解析してみました。勝手にやってすいません。問題あれば削除します。
考え方のデザインと調理技術は『両輪』
月刊専門料理でさせていただいていた、料理のデザインと考え方の連載でも、多くの料理人の皆さんの調理技術の科学的な解説だけでなく、「どうやって新しい料理を考えるか?」が非常に興味深く、それを科学的に見える化できれば、若い料理人が新しい料理を考えるときの指針にならないだろうか、と考えていました。
調理技術は「どうやって作るか」についてのテクニックであり、もちろん必要なものです。一方、考え方は「何を作るか」についてのテクニックのようなものが、まとまっているわけではないので、なかなか身につけることは難しいと思います。
それをなんとか共有できる形にして、なぜこれを作るのか?を知れれば、調理技術を考えるときにも「なぜこの仕事が必要なのか?」ということを、理解しやすいのではないでしょうか。
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